1. 志本主義は「概念」か「言葉」か 【読書考①】

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学長室より

志本主義は「概念」か「言葉」か 【読書考①】

    

このところ、停滞気味の日本経済の実情を反映してか、あるいはアメリカ流の金融資本主義が色あせたためか、さまざまな「ポスト資本主義」論が花盛りです。その中から、目に付いた名和高司氏の『パーパス経営―30年先の視点から現在を捉える―』を読んでみました。

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この本は、「経営(学)の書」に見えながらも、「資本主義」の先にくるものは、「志本主義」であると力説。社会の基軸は「資本」=資産から「志本」=心へ進化すると。氏は、今どきの病める企業経営―経済社会の核心部分に「志」を据えて再生を図ろうと提唱しています。

例えば、渋沢栄一の「論語と算盤」の世界を「合本主義」すなわち「志本主義」とみなすなど、随所に「志本主義」の表現をちりばめています。ただ、「志本主義」なるのものの〈経済メカニズム〉の解明に迫っているわけではなく、その進化区分のメルクマールも定かではありません。本著作は、むしろ「人間性」=「志」に関連するよく知られた文献や経営者などの粋(名言・手法)を満載した学生にとっても良き「教養書」と言えるでしょう。

硬い本を離れて、ここに、もう一つ、『進化思考―生き残るコンセプトをつくる「変異と適応」―』を紹介しましょう。

これは太刀川英輔氏の作品。人はときにマンネリ化を嫌ったりします。日常を疑い、創造の領域に足を踏み入れます。ですから、新しいもの、または新しく見えるもの/魅せるものが創造されるわけですね。

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この本も、名和氏の著書と同様、分厚く3センチ超もあります。それでいて肩の凝らない、いわば「雑学大全」。読んで時間を忘れるほど面白い本、学生のみなさんにも是非一読をお勧めしたい。もし、手元にあれば、いつでもパラパラめくれる「話のネタ」本(アイデアヒント集)ともなって、これこそ積ん読に値する型破りの「鈍器本」ではないでしょうか。

では、また次回。

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