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  • HUB:高崎商科大学サジェスチョン

"自発的学習"へと導く"指導方法"とは? ~実務家教員と考える将来につながる教育~

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Vol.8では東証プライムに上場する企業を率いた実務家教員の東英和教授と、認定キャリア教育コーディネーターの沼田翔二朗氏に、教育の場を学外に広げ、学習と社会とをつなげる意義と効果について意見交換してもらいました。Vol.9では生徒が自発的に学べる環境づくりや教科指導上のヒントになる話を、引き続きお二人にうかがいます。
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Q.高校生は学んでいる?学ばされている?

Vol.8では教室での学習を社会とつなぐという、今後一層求められるであろう学校教育のあり方をうかがいました。今回は、教育の受け手である生徒側の課題に触れておきたいと思います。

沼田私が抱いている問題意識の一つは、OECD(経済協力開発機構)による調査で、日本の子供たちに「試験への不安は高いが、学習意欲は低い」という傾向が表れたこと。与えられる学びは多く、それを試される試験に不安を感じているが、学びへの目的意識が希薄なようです。

経営者だった頃、従業員が大学や大学院で学べるように支援したことがあります。その中には大学進学しなかった人や大学を中退した人がいましたが、いずれも学べることに喜びを感じていました。高校生や大学生の時の勉強には"やらされ感"があったのでしょう。大学でも社会でも一定量の知識は必要です。さらに必要なのは学びの作法を身につけていること。自発的な学びが習慣化していることは、自身を成長させるために重要です。

自発的な学びを促す方法の一つが、学びの場を学外に求め、普段の学習と社会とのつながりを実感させることでした。しかし学外には未知
な部分があるため、想定外を避けたい学校と馴染まない面があることも指摘されました。リスクを最小化して、学校教育に取り入れる方法はな
いのでしょうか。

沼田学校の日常に、少しずつ未知の要素を加えていくのはどうでしょう。参考になるのが、人の成長空間としていわれる「コンフォートゾーン」「ストレッチゾーン」「パニックゾーン」という分類です。心地良いコンフォートゾーンに居続けては、人の成長は望めないといわれています。一方で未知ばかりのパニックゾーンにいきなり生徒を連れ出すと、それこそパニックを起こしかねない。そこで、それらの中間にストレッチゾーンを設けてみる。例えば私は、学生が30人ほどの講義でも、全高校生は学んでいる?学ばされている?員の前でいきなり発表させたりはせず、まずは数人で自己紹介をし合ってもらう。それがストレッチゾーンになり、自己紹介し合う輪が教室に広がればパニックゾーンは消え、全員の前での発言も怖くなくなります。高校の教科指導でも、どのようなことが教室と社会を橋渡しするストレッチゾーンになるかを考えてみるのは有効かもしれませんね。

Q.高校の教科指導に学際性は必要?

高校の学びが変わるには、一方で大学入試についても考える必要があるかと思います。共通テストがそうであるように、大学入試で問
われるのは今も教科ごとの学力が中心です。

大学に進学するのであれば、やはり一定水準の知識は必要です。ただし、知識の量だけでは不十分。知識偏重と批判された時代の大学入試も、実は暗記した知識だけで解答できるという問題は少なく、身につけた知識の応用力が問われていたと思います。

沼田さらに近年の大学入試は、英語の問題で数学的な知識や見方を活用したり、グラフが出てきたりするなど教科横断的になっています。そこで問われているのはまさに応用する力であり、ある知識と別の知識を関連づける力だと思います。

高校の授業で、例えば数学の先生が社会科の経済と紐づけて指導するなど、他教科との関連づけはされているのでしょうか。

沼田そのようには関連づけている先生は少ない、というより、つながりに気づいてない教員が多いように思います。例に挙げた数学の教員であれば、大学では純粋な数学を深めていったはず。そこに経済学が関わることはなかったでしょう。

学問はそれぞれの分野を深く掘ることが重要だと、私は思っています。確かに、世の中では複数の課題が複合して現れます。そうした課題を解決するには、要素を切り分けながら考える必要があります。渾然一体となった課題の要素を正しく分解するには、数学は数学として、社会科は社会科として理解していることが前提。そう考えると、高校の授業で他教科との関連づけが常に必要とはいえないように思います。

沼田高校の先生は担当教科の基本的な体系を、生徒に正しく理解させることが第一の役割だろうと思います。ただし学校教育にICTの導入が進む今、知識の体系を1から10まで先生が丁寧に教える時代ではなく、テクノロジーの活用を含め、教科の体系的な理解を促す環境を整えることが学校の役割になるかもしれません。だからこそ理論と実践を往還させる部分は、学校以外のところに補完してもらうことで、社会や将来と今の学びをつなげてあげればいいのです。

高校の先生は、まず担当教科をしっかり教える。そのうえで、時には教科の周辺やつながりのある領域に生徒を連れ出してあげてほしい、ということでしょうか。

沼田高校の先生は、担当教科の見方で日常を過ごしていると思うのです。数学の先生であれば、見たものや聞いたものを数学的に考えてしまうとか。それは、先生には当たり前でも、生徒に
は未知の視点です。ある先生の話で面白かったのは、SNSで表示されるトレンドを、統計のグラフを持ちだして説明し始めたこと。そのような、数学の先生ならではの世の中の見え方を授業で
紹介すれば、生徒の関心も違ってくるのでは。高校の教科は実社会とかけ離れていたり対立したりするものではなく、むしろ専門性を突き詰めた先で、社会や他分野とつながってくるのではないかと思いました。


Suggesion『教科の専門性を突き詰めた先にこそ、学校と社会を橋渡しするヒントがある』

Vol.8で学びの場を学外に設け、普段の学習に不確実性をはらんだ未知の要素を取り入れようという提案も、日々の学習に目的意識を持たせ、生徒の自発的な学習を促すことが目的でした。
高校の先生は担当教科のスペシャリスト。その分野に興味を抱いたきっかけ、独特なものの見方や考え方などの人間味が加われば、教科学習に興味が湧くきっかけになるかもしれません。
 紙幅が足りず割愛しましたが、対談の途中「高校教育に望むことは?」という質問に対し次のようにコメントがありました。「むしろ大学教育に何を望むかを、高校の先生から聞き意見交換をしてみたい」。今後も『HUB』は高校と大学とをつなぐ橋渡しに努めます。

今回インタビューした教授

商学部 経営学科

東英和・沼田翔二朗

東 英和(博士/経営学)
㈱AOKIホールディングスの代表取締役社長などを経て、大学教員に転身。現在は、管理会計視点からの人的資源管理を主なテーマとして教育・研究に取り組んでいる。

沼田 翔二朗(修士/地域政策学)
群馬県地域づくり協議会会長、群馬県教育委員会教育長職務代理者などを歴任。一貫して小・中・高の学校教育と社会をつなぐ取り組みに力を注ぐ。

東英和・沼田翔二朗