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TUC Column

  • HUB:高崎商科大学サジェスチョン

"科目"は"社会"とつながっているか? ~実務家教員と考える将来につながる教育~

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今の教育現場は、かつて批判された暗記による知識詰め込み教育の反省を踏まえています。そのためか、発表やグループ学習などアウトプット力の育成が注目されがち。しかし優れたアウトプットには適正なインプットが必要であるはず。そこで知らなかったことを知るという学びの第一歩に立ち戻り、今求められるインプットのあり方を、HUB Vol.8とVol.9の2回にわたり考えます。
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Q.意欲を育てることは本当に不可能か⁉

学校教育の出口から、対談を始めたいと思います。企業が大卒者の採用に積極的なのは、大卒者の方がインプットされた知識量が多いためでしょうか。

知識量を含め、大卒者は人材として優秀である可能性が相対的に高い、と考えるためでしょう。ただし、すべての企業が大卒者の採用に積極的とは言えませんし、入社後に"化けて"活
躍する人もいて、その潜在的な能力を見極めることは常に採用活動の課題でした。

沼田NPOの採用も基本は同じです。「能力の見極め」という点で、私はいつも応募者の"ものがたり"を聞いています。具体的には、これまでに自分なりの課題を設定して取り組んだ経験、その中での試行錯誤、さらにそれらを通した自身の変化や成長などを語ってもらいます。その姿勢は、卒業後の仕事人生にも重要だと考えるからです。

社会や人生に対して意欲的かどうか、ですね。

学校で、意欲を教えることはできるのでしょうか。


「意欲だけは教えられない」と断言する経営者もいます。ある点では同意する一方、私が実業家から大学教員に転身した理由の一つは、意欲を教育によって醸成したいと考えたことでした。

沼田私は、意欲は育めると思っています。肝心なことは、秘めた意欲を行動に移せる機会や環境が与えられているか。その機会や環境を提供することが、教員の重要な仕事だと考えます。

Q.私たちは学生・生徒をなぜ学外に連れていくのか?

お二人は企業経営や社会活動の実践者です。学問の理論は現場の実践に生かせるものでしょうか。

学問は、すぐに役に立つとは限りません。しかし、思いも寄らぬ出来事に遭遇した時の拠りどころや立ち返る先は、体系化された理論であると考えます。新型コロナウイルスによるパンデミックで需要が落ち込んだ時、私は過剰になった供給態勢をどのようにマッチさせるかを大学院の学びに求め、その答えを原価計算の中に見つけました。原価計算は会計学の基本。積み重ねられた知見が経営の課題解決に生き、周囲より早く黒字化できました。現場で経営に没頭していたら、苦境を打開する解を一早く見つけることはできなかったでしょう。高校の教科にも、同じような知恵が詰まっているのではないかと思います。

「実践」と呼べるものがない大学生や高校生は、理論と実践をつなげる学びは難しいでしょうか。

沼田実践と理論を往還させる学びを、高校生や大学生に求めるのは確かに難しい。しかしできると思います。例えば、自分たちが学んでいることと社会とを関連づけて考えられるようにする。高校教育にインターンシップなど学外に出て行く学びをコーディネートしているのも、普段の学習と社会とのつながりを理解させたいためです。

私も、指導するゼミの学生を現役の経営者に会わせたり、課題のある現場に連れて行ったりします。そこでの経験は学生にとって、教室で学んだことの"答え合わせ"になり、頭の中だけ
で理解していた知識に実感や実態が伴ってくるようです。

沼田「学校で普段学んでいること」と「その学びを社会でどのように生かすか」、そもそも「社会の現状はどうなっているのか」──それらの知識や経験を往還させることで、子供たちが学ぶ手応えを感じる可能性が高まると思っています。かつてインターンシップ先に市役所を選んだ高校1年生がいました。理由は「親が『将来は公務員がいい』と言っているから」。本人の意欲は曖昧なまま配属されたのが市の水道局だったため、公務員はデスクワークと思い込んでいた生徒は戸惑っていました。しかし仕事の現場を体験した後、授業を受ける態度が変わりました。聞いたところ「職員さんがいつも未来の話をしていた」と。実はインターンシップの前に、自分たちが大人になる2030年の、社会や仕事を考える授業がありました。授業中に想像した未来と、水道施設が老朽化する将来の課題がつながったことで学びの目的意識が芽生えたのか、公共政策や地方自治体の予算などに関心を持ち始めました。教室で学んだ公民や歴史などと実社会がリンクしていることに気づいたことが、教科を学ぶ意欲につながった。これが、学校と学外の学びを往還させていく学習効果かなと思っています。

学生を学外で学ばせることは、学生だけでなく、私の学びにもなる。つまり教える側も学べると思います。

沼田学外での学びには不確実性が伴います。生徒の安全を考えれば、学校が不確実性を排除したくなるのは当然。先生は積極的になりにくいでしょう。しかし実社会とつながる学びが生徒に
将来就く仕事や職業などをイメージさせ、普段の学びの意義を理解させることを助けます。ひいては自ら学ぶ意欲を高め、教科学習にも良い効果が期待できる。また東先生がおっしゃるように、先生の学びにもなる。その点を考えると学校や先生方が、指導における不確実性や未知をどれくらい楽しめるかではないでしょうか。

Suggesion『不確実性を取り込んだ教育のすすめ 「正解のない教育は、期待か懸念か」』

学校は生徒の安全・安心が第一。教室は先生の管理・指導により秩序が保たれ、だからこそ生徒は毎日、昨日と同じ学校に安心して登校できるのです。一方で今の学校指導要領は「社会
に開かれた教育」を求め、教育の潮流も地域の企業や自治体、住民など学外との連携や協働に向いています。今でさえ時間が足りない事情を承知のうえで、今回は未知をはらんだ教育の
効果を、実践家であり教育者でもあるお二人のエピソードを通して紹介しました。 そしてvol.9では、正解が用意されていない教育を、(先生方の負担を最小限にして)現場にどのように取り込むかについて、引き続き考えていきます。

今回インタビューした教授

商学部 経営学科

東英和・沼田翔二朗

東 英和(博士/経営学)
㈱AOKIホールディングスの代表取締役社長などを経て、大学教員に転身。現在は、管理会計視点からの人的資源管理を主なテーマとして教育・研究に取り組んでいる。

沼田 翔二朗(修士/地域政策学)
群馬県地域づくり協議会会長、群馬県教育委員会教育長職務代理者などを歴任。一貫して小・中・高の学校教育と社会をつなぐ取り組みに力を注ぐ。

東英和・沼田翔二朗