- HUB:高崎商科大学サジェスチョン
AI時代の教育現場で大事なことって? ~Society5.0を豊かに生きるために~
AIの発達により、社会に大きな変化が訪れています。小学校から大学までの、本格的なAIやプログラミング教育がスタート。今後、生徒・学生に身に付けさせるべき力は何か。教育現場とAIの関りはどう変わるのか。高崎商科大学ではAIを教える佐々木正仁教授にお話を聞きながら、基礎知識から展望までをQ&A形式でまとめてみました。
Q.なぜ今、「AI」を学ぶ必要があるの?
A.あらゆる業種でAIの活用が進んできているから。
パソコンやスマホに関心のある広告が表示されるのも、小売店が売上を予測して商品を補充できるのもAIによるデータ分析の結果。そのほか、監視カメラの顔認証システム、工場や物流センターでの検品作業など、すでに生活のあらゆる場面でAIは稼働しています。人口減少が続く日本では、サービスの質の向上に加えて、業務自体の効率化を叶えるためにもAIが担う範囲は広がっていくことでしょう。第4次産業革命とも言われる技術革新の社会では、AIを理解し有効活用できることが、チャンスを広げることに繋がります。
Q.そもそも、AIとはどんなもの?
A.一言で言えば、人間が頭の中で行う知的活動を人工的に再現する技術
実は、「AI」の定義は専門家の間でも異なっており、共通の定義がありません。正しいことが確定しているデータを多数用意して覚えさせ、そこから法則性をコンピュータが自ら着眼点を探し、法則を見つけ出す「ディープラーニング」等の学習を繰り返すことで、人間の知的な活動をコンピュータに行わせることを可能にしたソフトウェアや技術のことを広くAIと呼んでいます。自動翻訳や画像解析、コンピュータ将棋ソフトウェアなどが、その代表例です。
佐々木先生のゼミでは
「商学部生が自力で作る金融業界向けAI」 |
銀行が融資の可否を判断する際に必要な「与信評価」をAIに行わせるシステム、財務分析AI「TUCコイタ君」をPythonという言語を使用して開発しています。専門家による企業の与信評価と各企業の様々な財務指標のデータを基に、AIにそれらの関係性を学習させることで、機械学習による分類手法を用いた与信評価が可能になります。 |
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Q.将来、学校でAIはどう使われる?
A.学習管理や進路選択など様々な領域での活用が検討されています。
適したデータを学習させることで、学校現場でも様々な用途で活用可能性があります。
学びの個別最適化
修得分野や苦手な問題といった学習履歴をAIに学習させることで、一人ひとりに異なる宿題を出すなど、各自に合った学習法を示唆することができます。
進路選択
生徒の学習活動や課外活動、進学・就職先、そこでの活動状況と満足度などをデータ化し、傾向を分析。AIが判断した「生徒に合う大学・学部」を進路指導に活かす研究も進められています。
採点
文字認識、音声認識などの機能と、点数配分の法則性をAIに学習させることで従来の選択問題だけではなく、記述問題や口述問題もAIによる採点が可能になると考えられています。
授業改善
授業中の教員の板書や、発言、動き。そこでの生徒の反応や理解度などをデータ化し、分析することで、お手本とすべき「優れた授業」に共通する傾向を探ることができます。
Q.「AI教員」は実現可能?
A.教職者自身がAIをどう活用するか考えていくことが重要。
学校現場でのAI活用が進むことで、教員の仕事がどう変わるかは簡単には予測できません。佐々木先生はこのように語ります。「AIの発展によって"こんな未来"が訪れるといった話は、軽々しく論じるべきではないでしょう。AIにできることがますます増えるこれからは、その活かし方をデザインする仕事の重要性も高まります」。AI社会での生き方を生徒に教えるために、教職者自身がAIについてより深く理解する努力が今後重要になるでしょう。
Q.「技術を身に付ける」のがAI教育の目的?
A.「技術の理解を通じて、使い方を理解する」のが目的!
AIが広く行き渡る社会でよりよく生きるためには、プログラマーやエンジニアのみならず、あらゆる職種の人、社会で暮らすすべての人が、AIについて学び、"賢い使い手"になる必要があります。そのためには、技術的なことはもちろん、問題解決の適切な手順を検討する思考力や、コンピュータをよりよい人生や社会づくりに活かそうとする態度などを培うこと。情報技術教育を通じて、こうした能力を育成することが、教育の場で求められています。
Q.今、教育現場で重視すべきこととは?
A.大事なのは、「倫理観」や「思考力・創造力」を高めること。
適用範囲を判断し、AIを活用してどのような社会を築いていくのかを考えるのは私たち人間。誤った利用をしないためには、倫理観に基づく判断基準を備えることが不可欠であり、また、ツールとしてのAIをどう使うのかの発想力と、イメージを実現させる創造力も必要になってきます。こうした力を育成するには、既に高校でも実践されているような、答えのない問いに対して自分の考えを述べさせ、生徒に「なぜ」「どうして」を考えさせる対話型の授業を実施するなど、自分なりの価値基準や柔軟な思考を育てる取組みが有効でしょう。また、大学はこのような高校で培った力を更に伸ばす場ではなくてはなりません。AI社会で力を発揮する人材を育てるには、更に高校・大学が手を取り合い、多面的な能力を育成することが大切になりそうです。
佐々木先生のゼミでは
「アクティブラーニングを通して高校で培った資質と能力を高める」 |
教員が基本的知識と環境を提供しつつ、「Pythonによる財務分析のためのAI」という目的を達成するために必要な分析手法や開発手順については、学生が自ら学び、実現しています。与えられた課題を受け身でこなすのではなく、自分で考えてつくりあげていくことで、AIをより深く理解すると同時に、AIの可能性と限界を知り、AIに使われるのではなく主体的に正しく使いこなすための能力も身に付けることができます。 |
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