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消費税って何に使われているの?気になる「税金」あれこれ

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2019年10月から消費税が10%へ引き上がり、皆さんも生活のさまざまな場面で増税の影響を感じ始めていると思います。でも、「そもそもどうして消費税を上げる必要があるの?」「私たちの税金って、何に使われているの?」と、素朴な疑問を持っている方も多いはず。そこで今回は、税に関する法律について研究している、鈴木修特任教授にお話を聞いてみました!

消費税が10%に!どうして増税する必要があるの?

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日本では平成元年(1989年)に消費税が初めて導入されましたが、それ以降も何度か増税していますよね。なぜ消費税を引き上げる必要があるのでしょうか?

増税の理由の一つに、社会保障の財源確保があります。日本では平均寿命が年々延びてきている中で、どうすれば皆が安定した生活を続けられるのか、という課題がありますよね。政府が国の社会保障を充実させるためには、税金から収入を得るか、借金をするかの2択が考えられます。この税収のうち7割は所得税、法人税、消費税が占めていて、その中でも消費税は景気に大きく左右されにくく、安定した税収を得やすいことから、今回、増税によって社会保障費を確保する運びになったのです。

消費税が増えることで、逆に消費が落ち込んでしまうのではないでしょうか......?

確かに、支払う税金が増える分、生活者の負担も増えますよね。この税負担によって世の中の消費が冷え込まないように、政府はポイント還元サービスを展開しています。例えば、キャッシュレス決済を利用することによって購入金額の5%分、還元が受けられるなど、スーパーや小売店などではサービスの導入が始まっています。

日本は少子高齢化が進んでいることもあり、今必要な社会保障費に対して、税収が追いついていない現状があります。同時に、国の借金も新たに生まれていますので、このような背景の中、税金がどのように使われていくのか、注意深く見ていく必要があります。

税金の主な使い道とは?

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私たちの納めた税金は、具体的にどんなことに使われているのでしょうか?

税金の使いみちとして最も割合が大きいのが、社会保障費ですね。医療、年金、介護など、私たちの生活を守るために欠かせないものです。次に割合が大きいのが国債費。これは国の借金を返済するための費用です。

他にも地域の医療や警察、消防をはじめ、公的サービスに充てるために地方自治体に交付されたり、町や道路の整備、災害対策などを行う公共事業関係費として使われたり、学校教育や科学技術、文化の発展のために使われたり......。私たちが安心・安全で豊かな暮らしをするために、さまざまな場所で税金が使われています。

私たちの暮らしに必要なお金を支えているのが税金なんですね。

2019年度の国家予算は約100兆円にものぼり、そのうち3割は社会保障費が占めます。政府は消費増税や、これからの景気回復による法人税や所得税の税収増を期待していることからも、税金は重要なお金ですね。

ただ、予算は膨らんでいますが、社会保障費や国債費等を除いて、純粋に政策で使えるお金には変化がないという状況があります。

また、日本は高齢化率が高く、今後も続くといわれていますが、年金を受給している世代と税金を払っている世代の需要と負担のバランスが崩れてしまうと、十分な社会保障費を用意できなくなります。

そういった意味では、就労している現役世代に多くの負担を求めている所得税や、景気に左右されやすい法人税と比較すると、消費税は安定的な国の財源だといえます。

消費税が10%というのは、高いか低いかといわれると、どちらなのでしょうか?

日本では消費税が8%から10%へと引き上げになりましたが、例えばヨーロッパの消費税率を見てみると、イギリスやフランスは20%、デンマークやノルウェーなどの北欧では25%となっています。海外の税率と比較すると日本の税率は低いほうなので、今後も日本の消費税が上がっていく可能性は十分にあると思います。

日本で初めて導入される「軽減税率」について

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海外ではすでに実施している国もあるようですが、「軽減税率」は私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか?

軽減税率とは、標準税率が10%に対し、対象品目の税率が8%に軽減される制度です。これには「低所得者層の負担緩和」という目的があります。しかし、事業者側としては、テイクアウトやイートイン、レジ入力など、制度施行直後は混乱する可能性もあります。

例えば、フランスではバターは軽減税率、マーガリンは標準税率が採用されていますし、イギリスでは軽減税率の対象となる食品の区分が細かいことが問題視されているといいます。消費者側にしても事業者側にしても、軽減税率は混乱を招きやすいかもしれません。

税金について理解するためには、どんな分野を学ぶ必要がありますか?

多数の種類の税金がありますので一概には言えませんが、例えば、法人税について言えば、現実の企業行動や組織構造を理解するために、経済学や経営学を学ぶことも必要でしょうし、実際の取引を理解するためには、民法・商法・会社法などの法律の知識や会計学の知識も必要になります。

今後ますます税金の仕組みも複雑になりそうですね。

世の中が変われば税金の仕組みも変えざるを得ないですよね。今までにないような新しい「税」が誕生するかもしれません。また、GAFAなどに対するデジタル課税のように各国と協調して仕組み作りを行う必要もあると思います。

私たちがこれから学び続ける上で大切なことは、何だと思いますか?

日常で簡単にできるのは、新聞や本を読むことですね。新聞を読む機会は減っているかもしれませんが、高崎商科大学の図書館では全国紙、地方紙、業界新聞等を読むことができますし、実際に新聞を広げながら読み、大事な部分をテイクノートし、コピーするといったことが習慣化できれば良いと思います。また、人生は意思決定の連続ですので、自分の知見を広げるためにも、本をたくさん読んでほしいですね。その意味でも、図書館を十分に活用してほしいと思います。

私は、(研究分野を限定する必要がありましょうが、)大学における研究の存在意義は「政策提言」ではないかと思います。法律や制度改正の際は、意見の発信をもっと行うべきと感じています。「ルールは自分たちが作っている」という意識を持ち、立法や仕組み作りに参加するためにもしっかりと学ぶ姿勢が重要だと思います。

先生の必需品!

税務日誌(日本税理士会連合会編集/中央経済社出版)

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今回インタビューした教授

商学部 会計学科

鈴木 修 特任教授

【略歴】
・札幌国税局に採用後、大蔵省(現・財務省)主税局総務課・税制第一課、札幌国税局消費税課等を経て、2006年退官。
・現在、税理士(東京税理士会所属)、日本税務会計学会・常任委員、税務研究会・税理士懇話会アドバイザー、(公財)公益法人協会・専門委員/主任研究員、(公財)ファイザーヘルスリサーチ振興財団・常務理事等に就任。
・法人税及び消費税に関する多くの出版物の編集・執筆や講演に携わっている。

【著書】
・『法人税ハンドブック(令和2年度版)』(単著、2020年6月、中央経済社)
・『税務経理ハンドブック(令和2年度版)』(共著、2020年6月、中央経済社)

【論文等】
・「業績連動給与」(単著、2020年5月『税務弘報』第68巻第6号、中央経済社)
・「IBM事件,ユニバーサルミュージック事件:法人税法における同族会社の行為計算否認規定」(単著、2019年11月『税務弘報』第67巻第13号)
・「特別インタビュー「結局,何がどう変わった!? 改正保険通達の正しい読み方」」(単著、2019年8月『税務弘報』第67巻第9号)

鈴木 修 特任教授