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元ベテラン銀行マンの准教授に聞く!「破綻する企業」「長く続く企業」のポイント

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皆さんは、「会社が赤字になってしまったら倒産する」と思っていませんか? 実は、赤字の企業は必ずつぶれてしまうわけではありません。逆に、黒字でもつぶれてしまう企業もあるんです。これは一体どうしてなのでしょうか? また、どんな企業が破綻してしまい、どんな企業は長く続いていくのでしょうか? そんな疑問について、長年群馬銀行に勤務した後、地域金融論、企業再生、中小企業経営支援、事業性評価などを専門に研究している、小板橋信二准教授に聞いてみました!

企業は赤字だから倒産するとは限らない

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まず、企業の赤字とは、どのような状態を指すのでしょうか?

「赤字」は、単に会計上で「収益」より「費用」が多い状態を指します。しかし、企業は赤字だから倒産するとは限りません。企業はお金を増やすこと(キャッシュ・フロー)の方が大切なのです。例えば、人間は血がたくさん出てしまっても、輸血をすることで生き続けられるかもしれませんよね。企業もこれと同じで、いくら赤字であっても、投入できるお金や蓄えがあれば倒産はしません。逆に、どんなに収益があがっても、代金が回収できなかったり、蓄えがなかったりする場合には、倒産してしまうこともあります。

企業を見る上で大事なポイントは、黒字か赤字かというよりも、お金を稼ぐ力があるかどうか。また、「ガバナンス(統治)」がきちんと取れているかどうかも重要だと思います。私は銀行員時代、ある企業に5年ほど出向して、内部から企業再建を行いました。そのとき、私が担当していた企業は企業再建に成功したのですが、競合企業は経営破綻をしてしまいました。経営破綻をしてしまった方の企業は、経営を監視するガバナンスが機能しなかったため、オーナー社長の不祥事を発端に倒産してしまったんです。

「セクショナリズム」の問題がある企業は危ない?

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他に、経営破綻の危険がある企業の特徴はありますか?

これは私が銀行員時代にいろいろな会社を回ってみて感じたことですが、部門間に壁があったり、経営者と社員のコミュニケーションが欠けていたりなど、「セクショナリズム」が起こっている会社はよくない方向に進む場合が多いと思います。「セクショナリズム」とは、一つの部門や立場にとらわれ、排他的になる傾向のことです。

先ほどのお話した企業再建に成功した出向先でも、セクショナリズムが起きており、再建計画がなかなか順調に進みませんでした。例えば、営業チームと現場・管理チームに、お互いをどう思うか聞いてみると、営業チームは、「俺たちが仕事を取ってくるんだからその範囲内で作業をすればいい」と、逆に現場・管理チームは、「営業が安い仕事しか取ってこないからうちは儲からないんだ」と感じていたんです。

また、同社は、経営陣と社員との間にも、セクショナリズムの問題がありました。経営陣が決めた方針が社員にきちんと説明されておらず、社員たちは自分たちで物事を考えず、言われるがままにしか動いていなかったのです。ですので、私たちが企業再建のために経営計画、再建計画を作った際は、全部署を回り、社員に計画の説明をしっかりとしてから実行に移しました。計画を説いて社員に、「こういうことをする必要があるから、こういう行動をとればいいんだ」ときちんと理解してもらう。このようなセクショナリズムの問題を見つけ解決していった動きも、企業再建を成功に導いたのではないかと思います。

では、長く続く企業に見られる特徴はありますか?

長く続く企業は、一つの製品やサービスをずっとやっていくのではなく、時代に合わせてさまざまな変革をしていると思います。例えば、デジタルの時代に移り変わりフィルムがいらなくなってきた今、フィルムの技術を生かして化粧品を作ったり、他業種へも目を向ける、アイデアのある企業は強いと思います。あとは、経営者が厳しいながらもすごく人に優しい企業。長年いろんな会社を見てきて、「人を思う」ことも、会社を大きくするためには必要なんじゃないかと思いました。

就職活動は、企業との相性が大切!

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先生は、学生の就職活動にも力を入れているそうですね。

私のゼミでは、就職活動へのモチベーションが上がるように工夫をしています。就職活動は短期間なので「イベント」だと思わないとやっていけません。また、企業と学生っていうのは相性が一番大切。もし希望の企業に落ちてしまっても、「相性が合わなかった」とポジティブに考えていかなくてはなりません。

また、企業勤めだったからこそのアドバイスもできているのかなと思います。例えば、広告の仕事をしたいと思っていても、大手広告会社に入ったら、ライバルが多く、自分のやりたいことができないかもしれません。それなら、メーカーで広告とか宣伝とかに力を入れている会社に行ければいんじゃないか、そうした方が自分がやりたい仕事につけるんじゃないかって。このように、自分の経験を生かして、こういう仕事がしたいんだったら、こういう選択肢もあるんだよ、というアドバイスができているのかなと思いますね。

最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

学生のうちは、仲間といろいろ議論をしてください。若いころからいろんな人と議論をしてきた人は、たくさんの角度から物事を見ることができます。仕事に関係することは、会社に入ってから十分勉強できるので、学生のうちはいろんなことにチャレンジするべきです。高校生のうちも、大学生になっても、勉強だけではなく、いろんなことにチャレンジしてほしいですね。

先生の必需品!

新聞の切り抜き

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今回インタビューした教授

商学部 会計学科

小板橋 信二 准教授

・略歴
群馬銀行にて長年、事業再生や債権管理・回収を担当。平成16年から20年まで群馬県大手ゼネコンに出向し経営企画部長として勤務。平成25年からは人事部人材開発室にて勤務し、「ぐんぎん金融大学校」の立ち上げを行った。

・研究報告
「銀行実務教育の質向上及び学生の理解度支援に関する研究~地域経済から期待される地域金融機関の役割と存在意義に着目して~」『高崎商科大学コミュニティ・パートナーシップ・センター紀要』第5号、2019年

・メディア出演
群馬テレビ「ビジネスジャーナル」コメンテーター

小板橋 信二 准教授