- 先生インタビュー
「分からなくても褒めてもらえる」英語の授業って?
自分の周りで「英語が得意!」って人は、そんなに多くないはず......。「日本人は英語が苦手」なんて言われることもあるし、中学から勉強しているのに、なかなか英語を使いこなせない日本人が多いのはなぜだろう......?そんな疑問について、英語の授業を行っているスニップ・キュースティン准教授にぶつけてみました!
授業で受けた〇〇により、日本人は英語が話せない?
聞き手 |
![]() 英語の授業をしていて「日本人は英語が苦手だなあ」と思うことはありますか? |
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スニップ先生 |
![]() うーん、苦手とは言い切れないけれど、日本人は英語について「難しく考えすぎ」だとは思います。きっとそれは、これまでに学校で受けた英語の授業が原因だと思うんです。 |
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聞き手 |
![]() え、どういうことですか? |
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スニップ先生 |
![]() 赤ペンでバツを書かれること、つまり間違えることを恐れてしまっているんです。自分の英語の文法が正しいか、使っている単語は合っているか、小さい頃から授業やテストで赤バツをもらううちに、間違いを無意識に恐れてしまっている。それでいろいろ考えすぎて、しゃべれなくなっている気がします。 本当は、とにかく英語を口に出してチャレンジすることが大事なのに。それがうまくなる一番の近道なのに! |
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聞き手 |
![]() 確かに......。英語を話そうとしても、合っているか不安になって口ごもってしまいます。 |
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スニップ先生 |
![]() ひとつ例え話を紹介しましょう。ある研究で、カゴの中にネズミを飼っていました。寝る場所とエサを置く場所は離れていて、ネズミは時間になると寝場所からまっすぐ歩いてエサを食べに行きます。でも、その途中に弱い電流が流れるポイントをつくると、ネズミは電流を受けるうちにそこを避けて、遠回りしてエサに向かうようになる。 |
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聞き手 |
![]() 電流が流れたらイヤですもんね。 |
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スニップ先生 |
![]() 次に、その電流が流れるポイントを毎日変えていきました。すると、あちこちで電流を受けるので、ネズミはもう動かなくなるんです。電流を怖がって、エサを食べに行こうとしない。 |
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聞き手 |
![]() かわいそう......。 |
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スニップ先生 |
![]() ですよね?学生を見ていると、赤バツはこの電流と同じなの......。今までの授業でつけられた赤バツが怖くなり、もう英語をしゃべらなくなってしまう。それなら「動かずここにいる」って。そういう学生を見ているとつらい......。本当に切ないし、悲しいんですよ! |
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聞き手 |
![]() なるほど......。 |
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スニップ先生 |
![]() 英語って、あくまで日本語の次に習う「第二言語」ですよね。日本で生活する以上は、まず日本語が必要。その次にプラスアルファで習っているはずなのに、どうしてつらい思いをしながら英語に触れないといけないのでしょうか。文法や単語を学ぶのはもちろん大切。でも、そこで何度もつけられた赤バツによって、英語を嫌いになってしまうのは間違っていると思います。 だから私は、学生が考えすぎず、楽しく学べる英語の授業を目指しているんですよ。 |
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正解が分からず黙るのではなく「分からない」と言えばいい
聞き手 |
![]() 考えすぎず楽しく学べる......。それってどんな授業なんですか? |
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スニップ先生 |
![]() ひとことで言うと、答えが分からなくても褒める授業よ。 |
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聞き手 |
![]() 答えが分からないのに褒めるんですか? |
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スニップ先生 |
![]() はい。例えば、私が学生に英語で質問したとします。そのとき、答えが分からなければ「分かりません」と答えてもOK。ただし条件があって、必ず英語で答えること。「I don't know」でいい。分からないなら、英語で「分からない」と言えばいいんです。 |
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聞き手 |
![]() どうしてそういうやり方なんですか? |
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スニップ先生 |
![]() もし日本語で「今日の天気は?」と聞かれたら、どう答えます?事前に天気予報を見ていたらその情報を言うけど、知らなければ「分からない」と言うじゃないですか。英語もそれでいいんですよ。もちろん正しい答え、理想の答えはあるけど、「分からない」と答えるのも自然な会話。正解を探して黙ってしまうより、英語を口に出す方が大切なんです。 |
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聞き手 |
![]() なるほど! |
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スニップ先生 |
![]() 私の授業ではカードを使うの。頑張った学生には特製のカードをあげるんです。例えば、私が質問して、学生が英語で答えたら1枚カードをあげる。その答えが合っているかどうかは関係なくて、とにかく英語で答えたらOK。だから「答えが分からなくても褒める授業」なんですよ。 |
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聞き手 |
![]() ちょっと楽しそう。どんどん英語で話した方が上達しそうですもんね。 |
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スニップ先生 |
![]() 例えばテニスをするとき、ルールや歴史、打ち方の説明をずっと学ぶより、実際にボールを打った方うまくなると思うでしょ?それと同じなんです。 ピアノでもいい。最初は1本指で弾いても構わない。大切なのはその中で楽しさを感じて、弾き続けること。すると、もっとうまくなりたいと練習するし、きっとテキストも見るようになりますから。 |
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聞き手 |
![]() そういうことですね! |
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スニップ先生 |
![]() 私も、最初は日本語が全然分からなかったんですよ。22〜23歳の頃にたまたま日本に旅行で来て、すごくいろいろ感じたの。広島県に行って、原爆ドームを見てショックを受けたり......。それで急に日本へ移り住んでしまったから、初めは日本語が全然分からなかったの。でも、生活していたら日本語を話さないわけにいきませんよね。そうやって必死に話す中でどんどん覚えたんです。それが一番の方法なんですよ。 |
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宿題はナシ。強制せずに「その先の楽しさ」を与える
聞き手 |
![]() ちなみに、先生が考える「英語を学ぶ楽しさ」ってどんなところですか? |
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スニップ先生 |
![]() 英語はあくまで道具なんです。英語そのものより、英語を話せることでいろんな場所に一人で行けたり、外国の人と話せたり。英語を使った先に楽しさがあるんですよね。 例えるなら「車」と同じ。車でドライブするのも楽しいけど、どちらかというと、行きたいところに行けて、いつでも自由に移動できるから車が欲しいんですよね。車そのものより、その先に楽しさがあるんです。 |
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聞き手 |
![]() その先の楽しさ、ですね! |
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スニップ先生 |
![]() そう!だからこそ私の授業は、なるべく英語を話しやすい環境をつくって、その先の楽しさを感じてもらいたいの。本当のことを言うと、宿題もないんです。ここだけの話よ(笑)。宿題を強制すれば、英語を嫌いになってしまうかもしれないから。 私の両親は、2人とも化学の教授でした。だから、子どもの頃、周りからいつも「親と同じように化学の仕事をすれば」って言われて......。でも、そう言われるとやりたくなくなるでしょ(笑)。結局、私は日本で英語を教える道を選んだわけで。周りがやらせようとしてはダメなんです。 |
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ジョーク、親を紹介...「本当にここの学生が大好き!」
聞き手 |
![]() 高崎商科大学の学生はどんな雰囲気ですか? |
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スニップ先生 |
![]() みんなピュアで、すごく面白くって、本当に大好き!あるとき、学生に「名詞の前に来るのは?」と授業で聞いたんです。もちろん、マジメな英語の質問として。でもその学生は......、なんて言ったと思います? |
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聞き手 |
![]() なんて言ったんですか? |
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スニップ先生 |
![]() 「メシの前に来るのは"いただきます"だ」って。「名詞」じゃなくて「メシ(飯)」だからって。それを聞いたときはもう、ソーキュート!本当にかわいかったですよ(笑)。そういうジョークも全然OK。英語が嫌いになって黙るよりずっといい。だから、本当に楽しく授業ができています。 |
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聞き手 |
![]() その雰囲気が伝わってきます。 |
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スニップ先生 |
![]() 文化祭の時には、ある学生がご両親を連れてきて、私に紹介してくれました。それもうれしくて。他の大学で英語を教えていたときにはそんなことってなかった!本当にここの学生はピュアで優しいです。 |
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聞き手 |
![]() これからも、どんな学生に会えるか楽しみですね。 |
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スニップ先生 |
![]() そうですね!とにかく私がやりたいのは、英語を楽しく学んでもらうこと。考えすぎないこと。在学生も、これから大学に来る高校生も、英語を嫌いにならず、みんな楽しく学んで欲しい。それが私の願いです。 |
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