学長室より
心の経営者、逝く 【時評事評②】
8月24日、京セラ元名誉会長稲盛和夫氏が亡くなりました。稲盛氏は「心の経営」を理念に、京セラを創業、また晩年にはJALを立て直しました。日本を代表する起業家であり改革者でした。
もう10年ほど前、鹿児島商業高校とホールAプロジェクトの協定を結ぼうとご当地を訪ねたとき、持参して行った文庫本が稲盛著『敬天愛人』でした。明治維新の立役者、西郷どんの「天を敬い、人を愛す」の精神を受け継いだ同郷の稲盛氏であればこその「経営哲学」が余すところなく披瀝されています。私にとって、手放せない書の一つです。(写真は、左から、『敬天愛人』の書、城山・西郷隆盛銅像、鹿児島商業高校にて協定記念・2013)
学生のみなさんへ、その中から、私の「好きな言葉」を紹介しましょう。(引用にあたり、少し分かり易く変えた表現もあります)
①人と人との心の結びつきを、最も大切にする
②人心の荒廃が組織や集団の崩壊を招く遠因となる
③人間として正しいことを正しいままに貫こう
④守りに入ると衰退の芽が吹き始める
⑤安定を望む人には創造的なことはできない
⑥創造的なこととは、できないと言われていることを実現させること
⑦心に描いた通りに、ものごとは成就する
⑧利己心を抑えなくては正常な判断はできない
「今は、日本国中雨漏りがしている。わが家の修理なんか、している場合じゃなか!」とは、稲盛氏が師と仰ぐ西郷隆盛の言葉(※)です。
おそらく、稲盛氏も戦後77年、日本の企業経営の現状や混沌とした国際情勢の行く末をあの世から心配しているのではと思います。(合掌)
※ 松浦光修『南洲翁遺訓』(PHP研究所 2008)参照